最近のワーグナー仕事
今年に入って国内のワーグナー公演は一気に増えました。
2月は二期会「タンホイザー」、3月はびわ湖ホール「ローエングリン」、新国立劇場「ワルキューレ」、4月にかけては東京春祭の子供のためのワーグナー「パルジファル」、そして今月は東京シティ・フィルの「ニーベルングの指環」ハイライト特別演奏会が開催され、ワーグナー目白押しです。
私は「ワルキューレ」と「パルジファル」で個人稽古を担当、「ニーベルングの指環」ハイライトのマエストロ音楽稽古で弾きました。
去年は、関わる予定だった春祭子供のための「トリスタンとイゾルデ」は中止、新国立劇場「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は延期になり、開催できたのは12月の「わ」の会公演のみでした。
今年は感染対策を施しながらワーグナーの公演ができるようになり、ありがたい限りです。
開催に向けた全てのご尽力に感謝いたします。
「わ」の会メンバーの活躍
ワーグナー公演のどの稽古場に行っても「わ」の会のメンバーに遭遇します。嬉しいことです。
新国立劇場「ワルキューレ」は、来日できなかった外国人歌手に代わり日本人歌手が出演、「わ」の会でご一緒している池田香織さん(ブリュンヒルデ役)、小林厚子さん(ジークリンデ役)も大活躍されました。
急遽出演が決まったため、準備のお手伝いをしましたが、お二人とも凄まじい集中力で流石の完成度でした。
大塚博章さんもヴォータン役カヴァーとして、万全の状態でスタンバイ。
そして「わ」の会代表、城谷正博マエストロが千秋楽のみ指揮。
オーケストラとのリハーサルなしのぶつけ本番だったのですが、驚異の統率力で見事なまとまり、大評判となりました。
作品を完全に掌握し、歌詞も全て暗譜していて、歌手の心理まで知り尽くしている城谷さんならではの名人技だったと思います。
春祭子供のためのワーグナー「パルジファル」には、「わ」の会から片寄純也さん(パルジファル役)、友清崇さん(クリングゾル役)、大沼徹さん(アムフォルタス役)が出演。
皆さん以前に二期会や新国立劇場の公演でも同役を歌っていて、役をマスターしています。
本来の役柄に基づきながら、今回の台詞あり一時間バージョンに対応して新たなキャラクターを作り上げ、大人も子供も引き込まれるパフォーマンスで魅了しました。
子供のためのワーグナーシリーズには2019年の「さまよえるオランダ人」から関わっていますが、毎回歌唱はドイツ語で字幕なし、台詞は日本語というスタイル。
日本語の台詞で内容を伝えながら、ドイツ語歌唱によりワーグナーの音楽をそのままの形で演奏します。
子供たちは歌唱中は何を言っているのかわかりませんが、音楽から多くのものを感じ取り、楽しんでいるようです。
子供の感受性にストレートに訴えかけるこの企画、とても面白いです。
飯守泰次郎先生のワーグナー精神
一昨日、5月16日に開催された東京シティ・フィルの「ニーベルングの指環」ハイライト。
これは飯守泰次郎マエストロの傘寿記念コンサートでもありました。
休憩二回を挟んで上演時間4時間40分、リングの醍醐味がぎっしり詰め込まれた、長大で濃厚なプログラム。
飯守先生とシティ・フィルさんが長年に渡って追及されてきたワーグナーの精神、築いて来られた信頼関係の深さに感動しました。
歌手の皆さんも素晴らしく、熱量に圧倒された公演でした。
緊急事態宣言延長により開催が危ぶまれましたが、無事に飯守先生の傘寿を祝うことができ、本当に良かったです。
飯守先生とは新国立劇場で、2014年「パルジファル」、2015年「さまよえるオランダ人」「ラインの黄金」、2016年「ローエングリン」「ワルキューレ」、2017年「ジークフリート」「神々の黄昏」をご一緒しました。
その中で、ワーグナー楽劇の真髄を沢山教えていただきました。
その造詣の深さが凝縮された動画がこちら。永久保存版です。
飯守泰次郎の「パルジファル」音楽講座
「わ」の会メンバーも全員飯守先生の薫陶を受けていて、この精神を受け継ぎ、そして引き継いで行かなければならないと強く感じています。
「わ」の会は今年も12月に、次世代ワーグナー歌手を交えたコンサートを行う予定です。
詳細が決まりましたらまたお知らせいたします。